労務管理の豆知識No.15<兼職禁止について>



最近話題になったのは、厚生労働省のモデル就業規則から、兼職禁止条項
を削除したという話題です。これにより、まるで兼職を認めるのが当たり前だ
と経営者が判断したらどうなるのかを筆者は危惧しています。
この問題の根は深いのです。

1.兼職禁止の意味は何か

 法律上、兼職を禁止することは問題ありません。兼職を認めると、労働時
間の管理面でも難しい問題が発生します。自社で定時で仕事を終えて帰社
した後、どこかで働いていたり、自営をしていたら、睡眠時間も少なくなり、
過労になるリスクも高まります。
 そして、挙句の果てに、兼職の疲れにより勤務時間内でのパフォーマンス
の低下や労災につながるリスクを高めるのですから、たまりません。
 最悪の場合ちゃっかりと自社の技術を習得した頃を見計らって退職してい
けば、会社は教育する手間も時間もコストもかけてせっかく一人前になった
頃に退職されてしまい、ライバルを育てることにもなりかねません。

2.兼職を認める理由は何か

 兼職を認める会社は、そこまでしないと目の前の求人を満たすことができ
ないという事情があるでしょう。また兼職を認めるから入社してほしいという
ことは、それほど自社の給与では生活が苦しいと認めることになります。パ
ート・アルバイトに兼職を認める理由と同じです。
 また大企業ではいくらでも若くて優秀な人材が集まるため、兼職を認めて
過去に採用してもうだつが上がらない社員を独立させようという狙いがある
可能性もあります。

3.中小企業は兼職を認めない方が良い

 筆者の意見は、兼職禁止です。もしも厚生労働省が将来兼職を認める
法改正などしようものなら大変なことになると思います。所定時間内に仕事
を終えてさっさと帰社して他社で働きだすと、自社の技術流出と労災のリス
クが高くなり、日本経済の土台を支えている中小企業の経営基盤が低下し、
労災による公的支出が増加すると思います。労災になると一生生活費と
治療費を国が負担するのですから、公的負担の増加は避けるためにも、
兼職を法律で認めることはしない方が良いでしょう。
 兼職を禁止しても、陰でする人はいるでしょうが、堂々と認める事よりも
弊害は減らせます。所定時間内に仕事をいかに集中してするのか、そして
勤務先の経営に共感する人をどう増やすのか、経営理念とビジョンの共有
により生産性を高めるためには、兼職禁止の方が賢明だと考えます。

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